ルルが告げようとすると、聞こえるかどうかといった小さな声で「対価があれば許されるか」とつぶやいた。

「……分かりました。ただし、これ一枚分の魔力しかお貸ししません」

 金貨を受け取ったノアは、ルルの手をつかむとその場にひざまずく。

「我が力を、ルルーティカ様へ捧げます――」
「っ!」

 騎士が忠誠を誓うときのポーズで、白い指先にキスが落とされた。
 柔らかな感触に、ルルの心臓はドキリと鳴る。

 口付けされた場所から魔力が電流のように体をほとばしる。空っぽの体が満たされていくような、甘やかで懐かしい感覚を、ルルは目をとじて味わった。

 魔力が長い髪の端までいきわたるや否や、ノアはルルを横抱きにしてバルコニーに出た。

「行くぞ、キルケゴール」

 ノアが声を掛けると、相棒である一角獣《ユニコーン》は、前脚を高くあげて答えた。