荘厳な光景に、ルルは言葉をなくした。平身低頭する一角獣に囲まれた聖女にかしずいて手を伸べるのは、彼女の騎士であるノアだ。

「一角獣はあなたを選びました。あなたこそ、次の聖王に相応しい。私が仕えるべきただ一人のお方です」

 感極まった黒い瞳のなかで、キラキラと星がまたたいている。その輝きは、彼もまた天空からの使者なのだと示していた。
 
(この手を取らないと、ノアは空に帰ってしまう)

 ルルが手をとると、ノアは、ほっとした様子で微笑んだ。
 成り行きを見守っていた司教たちから、拍手喝采が起こった。

 シスターやマロニー地区の司教、集まった各地の司教たち、ヴォーヴナルグ率いる聖騎士団やガレアクトラ軍人までも、晴れやかな表情で手を打ち鳴らした。