しゃがんだマスクの男は、膝をついたマキャベルの耳にささやく。

「俺様これでも元聖王なんだけどなー?」
「! 貴様、いしゅ――」
「黙ってろ」

 金色の睫毛を震わせた男――イシュタッドは、マキャベルの後頭部に手刀を入れて気絶させた。

 一方のルルは、自分に顔を寄せてくる一角獣たちに戸惑っていた。
 集まっているほとんどの個体の耳に、ガレアクトラ文字の識別タグがついていて、軽い怪我を負ったものもいた。

「檻から逃げ出してきたの?」

 白い頬に手を滑らせたルルは、まるで霧のなかに吸い込まれるように、大聖堂とは別の光景を見た。