「無償の愛など幻想だ! だからこそ私は、富を得るために非道徳的な行いができたのだ。そんな影も形も見えないものに、振り回されるものかっ!」

「つくづく馬鹿なやつだな……」

 アンジェラと並んでいた黒い騎士服の男が、一角獣の間を縫ってマキャベルに近づいた。彼は、剣の根元をにぎって、無理やり奪い取る。
 手の平から血がポタポタと落ちるが、顔には黒いマスクをしているため、痛がる表情は見えない。痛みも何も感じていないように堂々としている。

「ここは、この国で一番清らかな場所だ。お前の汚い血なんかで汚してみろ。せっかく許してくれてる一角獣が怒り狂って、鞠みたいに蹴られて、砕けた骨と破られた肌と流れる血のフルコースで、地獄の苦しみを味わいながら死ぬことになるぞ。そういうのがお好みなら町外れにいって、誰にも迷惑がかかんないようにやれよ」

「王女の自警団ごときが。誰に口をきいている……!」
「誰に、ねえ」