ノアが注文をつけると、店員が陳列ケースをあけて、宝石がいくつも連なったアクセサリーを取り出した。
 口元が始終にっこりしているのは、ルルとノアを微笑ましく思っているからだろう。年齢的には、花嫁衣装をはずかしがる新婦と、花嫁に美しい格好をさせたい新郎に見えてもおかしくない。

(ノアとはそんな関係ではないし、買うつもりもないんだけど……)
 
 しかしルルに、試着しておいて買う気はないんです、と言う勇気はなく。
 それからしばらく、銀のティアラや宝石ピンや真珠のラリエットを付けたり外したり、着せ替え人形のように扱われるがままだった。

「――はぁー、つかれた」

 ノアが見立てたドレスとアクセサリーを注文して、ルルはようやく解放された。

 今朝方、日用品の買い出しという名目でお屋敷から連れ出されて、先ほどの婚礼洋品店で五つの店を回った。

 一軒目の仕立屋で日常着となるシンプルなワンピースをいくつか注文して、二軒目で髪をとかすブラシや肌を潤すローズウォーターといった身だしなみ用品をそろえ、三軒目ではレースのベッドカバーや一角獣《ユニコーン》の形をしたクッション、洗い替え用の毛布を買った。

 四軒目では食器類を見た。ルルは、お屋敷にあるものを使わせてもらえればそれでいいのに、ノアがルルの分を買い足すと言って聞かなかったのだ。
 ノアが会計している間に、ペアになったティーカップを見ていたら「これも」と買ってくれた。