何十何百もの足音が重なる。音はどんどん大きくなり、開けっぱなしだった大扉から、一角獣の大群が大聖堂に駆け込んできた。

「うわあ! 一角獣だ!!」

 腰を抜かしたジュリオは、踏みつけられるのを恐れて壁際にはっていく。
 大群は、司教たちが座る椅子のあいだを一直線に走り、マキャベルとルル、ノアを取り囲んだ。
 マキャベルの近くにいた一角獣は、服を噛んで剣を下ろそうとする。

「なぜ私を止める……。私は、お前たちを売り払って財を成していた者だぞ」

「それは、一角獣《ユニコーン》が人を愛するように生まれてくるからです。救いようのない人間は嫌いますが、魔力の有無にかぎらず、どんな人も慈しむ聖獣なのです。私ならば、あんな非道な真似は許しませんが、彼らはあなたを許した。無償の愛で」

 ノアが一角獣の気持ちを代弁する。しかし、マキャベルは「信じられるものか!」と、服に噛みついていた一角獣を振り払った。