「私はこの国の主席枢機卿なのだ。誰もがかしずき従うべき存在なのだ!」
「そんな人はおりませんわ、マキャベル殿。わたしたちは皆、自分の考えて動いているのです。聖王を敬うのだって、決めるのは人それぞれですわ」

 最終的に人を動かすのは命令ではない。その人がどう感じ、どう考えるかなのだ。
 聖王を重んじるかどうかも、本来ならば自由でなければならないことだ。

 ルルは、空の玉座の下でマキャベルと向かい合った。
 聖教国フィロソフィーの王族として、覚悟と信念をもって対峙する王女の姿は、魔法の力がなくとも気高く美しく輝いていた。

「主席枢機卿、罪をお認めなさい、一角獣を売り払った対価で贅沢に溺れていたことも、聖王を崖から落として見て見ぬ振りを貫いたことも、反省するべきですわ」
「なにも証拠はないだろう。聖王イシュタッドの遺体は見つかっていない。捕らわれた一角獣も、密輸品を積み込んだ商用船も、なにもかもが王女殿下の嘘だ!」

「失礼する!」