イシュタッドの生死は伏せた。伏せておく方が、ガレアクトラ帝国を揺さぶる材料になるからだ。
 ジュリオを平和的に聖教国フィロソフィーから追い払うためには、彼の母国である帝国からの干渉を利用するのがいいと、兄イシュタッドが入れ知恵してきた。

 ルルは強く指摘したが、マキャベルは「作り話ですね」と動じない。

「ルルーティカ王女殿下は、ジュリオ殿下の内定式を邪魔したいのですね。だから、密輸などとでっち上げられたのでしょう。皆の者、騙されてはならない。王女殿下は、長く修道院にいるうちに、空想癖をそなえられたようだ。早急に控え室にお連れしろ!」

 マキャベルが命じたが、集まった司教たちは誰も動かなかった。
 沈黙して、疑いの目をマキャベルに注ぎ続けている。

「な、なぜ誰も従わない。枢機卿団に立てた誓いを破るのか!」
「お先に清貧の誓いを破られたのは、そちらでしょうに」