たずねるジュリオを、マキャベルは恐ろしい形相で睨んだ。

「黙っていてください」
「黙れ? 君、誰に向かって言ってるか分かっているのかい? 僕は王子だ」
「そちらこそ、その発言がどういう意味になるのか分かっているですか」

「落ち着いてください。ジュリオ王子殿下、マキャベル殿」

 仲間割れの気配を漂わせる二人に、ルルは一歩ずつ近づいていく。

「ヘレネー様が帝国に嫁がれたのは、もうずいぶん前のこと。彼女が持っていった魔晶石にそれほどの力はありません。マントに仕込まれているのは、最近カントで暴れているガレアクトラ軍人が持っているのと同じく、一角獣保護法が施行されて以後に盗られたものだわ。これは重大な犯罪です」

 ルルの後ろに、子どもの一角獣とノアがついていく。
 黒い騎士と白い聖獣に従われたルルの神々しさは、まさしく聖女らしい聖女として、大聖堂の空気を支配していた。

「あなたたちは、さらに大きな罪を犯していますね。私は、それを暴くために戻ってきたのです――」