「怖かっただろう。もう大丈夫だ」

 ノアが縄を切ってやると、子どもの一角獣は一目散にルルのそばに駆けてきた。
 無理やり引っ張って連れてきたのだろう。首筋に縄のあとが付いている。

「聖王になれるのは『一角獣から選ばれた人間』。ジュリオ王子殿下は、式典でそうと見せかけるために、魔晶石をたくさん仕込んでおられたようですわ。どこからそんなに調達されたのかしら?」
「は……母だよ。彼女はこの国から、大量の魔晶石を持って輿入れしてきたんだ。みんな知っているだろう!」
「それは嘘だわ。ノア、この子のはあるかしら?」

 命じられたノアは、ジュリオに剣を向けた。
 隅に控えていた軍人が駆けつけようとするが、黒い騎士服をまとった一団――アンジェラと雇いの聖騎士によって牽制されている。