(二度とイシュタッドのような聖王を誕生させるものか)

 どす黒い決意は胸のうちに隠して、マキャベルは、内定者に着付けるマントを持ち上げた。

 上等な白い毛皮に、金色の星飾りが無数に縫いつけられている。ただでさえ重量があるのに、とある仕掛けを施しているせいで、ことさら重い。

「これより、ガレアクトラ帝国のジュリオ第四王子殿下に、聖衣をまとわせて天啓をあおぐ」
「さっさとしてくれたまえ」

 ジュリオはマキャベルから奪うようにして、マントを羽織った。そこに、一体の一角獣《ユニコーン》が連れられて来る。

 カントの外れにある教会の裏にいた、角の折れた子どもの一角獣だ。痩せ細って、翼は羽がところどころ梳けており、見るからに弱っている。