枢機卿団の重鎮と、聖教国フィロソフィー全土の司教たちが顔をそろえた大聖堂で、次期聖王の内定式が執り行われようとしていた。

 空の玉座の下には、ガレアクトラ帝国軍の正装である真っ赤な軍服に白いエシャルプを掛けたジュリオが控えている。

「僕が聖王になるのは、運命によって決まっていたんだ。内定式なんてしなくても、選ばれし者だと一目で分かると思うけれど」
「ジュリオ王子殿下のおっしゃる通りです」

 もったいぶって前髪を払うジュリオを、マキャベルがおだてる。彼が機嫌をそこねて内定式を蹴ってしまえば、振り回されてきたこれまでが水の泡になるからだ。

 ジュリオは気づいていないが、マキャベルは彼を傀儡《かいらい》にするために尽くしている。贅沢と賞賛が大好きで、それ以外に興味のないジュリオを聖王にしてしまえば、この国を思うがままに動かせる。