恐らく、清らかさとは真逆の醜穢《しゅうわい》さで相手を汚さないように、長い夜をどんな風にやり過ごそうか考えたのは、己だけのはずだ。

「いつか私から教えて差し上げます。一晩大人しくしているので、先にご褒美を」

 ノアが口づけると、ルルは静かに目を閉じた。
 服をぎゅうと握りしめられたので、安心させるように手を重ねる。彼女の手は熱くて、小さくて、まるで自分の心のようだとノアは思った。

 その夜のキスは、小鳥がついばむように軽く、甘い夢のように長く、長く続いたのだった。