驚いたアンジェラは、慌ててキルケゴールにまたがり、ユーディト地区を目指したのだという。その道中で、ノアに乗ったルルとイシュタッドに出会った。
 つぎに、人の姿になったノアが言葉をつぐ。

「ルルーティカ様は、ユーディト地区の教会を『ルルーティカ王女』として訪問しました。もてなした大司教たちは、崖から落ちたのでもう死んだものと思い込んで、行方不明という情報をカントの新聞社に持ち込んだのでしょう」

 先に崖から落ちたイシュタッドは、行方不明という形で世間的には片がついた。
 ルルーティカも同じような扱いにしてしまえば、誰も罪に問われることなく聖王候補は一人に絞られる。

 二口でユニコケーキを食べ終えたイシュタッドは、バルコニーにいるキルケゴールを眺めながら紅茶を飲む。

「国が衝撃に包まれている今こそ、次の聖王を決めるのに絶好のタイミングだな。数日以内に、聖王内定の続報が出るだろう――どうする。ルル?」