キルケシュタイン邸の食堂にて。ルルとイシュタッド、ノアとアンジェラが、ガラスケースに入れられた魔晶石を囲むように顔を突き合わせていた。
 海に落ちた三人は、入念に体と髪を洗って清め、新しい服に着替えている。

 話のタネにと広げた号外には、『激震!ルルーティカ王女の疾走と失踪!? ガレアクトラ軍人の調査により判明』と、巨大な文字がおどっていた。

(わたしを追いかけ回した軍人が、よくも堂々と言えたわね)

 ルルは、不満が口から飛び出さないように、お茶請けに出されたユニコケーキのイチゴを頬ばった。みずみずしい果実は甘酸っぱくて美味しい。
 うっとりするルルの代わりに口を開いたのはアンジェラだ。

「あの日、ルルーティカに変装したあたしは、キルケゴールに方向転換してもらってこの屋敷に戻った。それから姿を見せなかったから、追っ手の軍人たちはルルーティカは屋敷に引きこもっていると思ったはずだ。それなのにこの号外だろ」