城塞が見えてきたところで、前方から黒い一角獣が空を駆けてくるのが見えた。
 乗っているのは、黒い騎士服に身を包んだ少女だ。

「アンジェラ!」

 ルルが手を振ると、アンジェラは手綱を引いてキルケゴールをなだめた。

「ルルーティカ。無事でよかった! お前まで行方不明になったって号外が出されて、カントが大騒ぎになっちまったんで、探しに行こうと思ったんだ。……そっちの男は?」
「この人は、イシュタッドお兄様よ」

 片手を挙げるイシュタッドを、アンジェラは、恨みのこもった瞳で睨んだ。

「とっくに死んでると思ったのに。ノアはどうしたんだよ?」
「後で説明するわ。今は、キルケシュタイン邸に戻って、体制を立て直しましょう」

 ルルは屋敷がある方を指さして、天啓を得た聖女のように言い放った。

「そして、ジュリオとマキャベルの悪事を明るみにするのよ!」