『飛んでいる最中に私の機嫌を損ねたら、遠慮なく振り落としますので気を付けてください。イシュタッド陛下』
「ご指名か。口を閉じてりゃいいんだろ?」

『ええ。ルルーティカ様が落ちないように、抱えて差し上げてください。ルルーティカ様は、できるだけ毛玉になっていてください』
「がんばるわ!」

 毛布がないので物理的に持ち運びやすい形にはなれない。だが、巣ごもり生活で鍛えた丸くなる筋力はあるので、たてがみに顔を埋めてノアにしがみ付いた。

『行きます』

 ノアは翼の性能を確かめるように、バサリバサリと羽ばたくと、軽やかな足どりで海の上へ駆け出した。
 スピードが上がっていくのに比例して、ルルの髪は真後ろにたなびいていく。