「八方塞がりね……。お兄様みたいに、サバイバル生活を送るしかないかしら?」
「私がお役に立てると思います――」

 ノアは、二角獣へと変化した。片方の角が折れた黒い体躯は、キルケゴールみたいにしなやかで、彼より少し大きい。

『ルルーティカ様をいただいたので、消耗していた魔力が回復しました。ユーディト地区の外に出るくらいまでなら、お二人を乗せて空を飛べます』

「ありがとう、ノア。お願いするわ」
「それくらいしてもらわないと妹をくれてやった甲斐はないよな。よいしょっと」

 イシュタッドは、近くの流木に片足をかけて、ノアの上にまたがった。乾いたショールを肩にかけたルルは、引っ張り上げられてイシュタッドの前部に、横向きなって座る。
 ノアは、フシュッと不満げな息を吐いた。