「人の姿が保てなくなったら、ノアも天空に帰ってしまうの?」
「もう帰れません。ここまで消耗してしまっては、消えるのみかと」
「そんなの、絶対に嫌!」

 ルルは、ノアの首に腕を回してキスをした。
 噛みつくように触れてきたルルに、ノアは目を見開いて驚く。
 
「――ノアが消えてしまうなんて、自分が死んでしまうよりも嫌。わたしが無くなって、ノアが生きられるなら、そうして。わたしの全部をあなたにあげる」

 透けた手を取り上げたルルは、自分の胸の中心に当てた。
 好きな人との初めてのキスに飛び跳ねる心臓も、うれしさではち切れそうな心も、震える体も、全て差し出すつもりで微笑む。

「大好きよ、ノア。受け取って」