「いつから?」
「……晩餐会の夜からです。二角獣は、人間に与する場合は、代償をもらわなければならないのですが、個人的な理由でおこたりました」

 ノアが二角獣であることは、研究所の秘密をにぎりこんだイシュタッドとヴォーヴナルグ、当時のわずかな関係者しか知らない。
 ルルにも永遠に秘密にしておくつもりだった。

 研究所での攻撃的なノアを見ているルルは、ノアの正体を知ったら怯えて遠ざけようとするかもしれない。そんなことは耐えられなかった。

 ノアにとっては、ルルはもはや自分の生活の一部だ。
 屋敷に彼女がいてくれないと、体の真ん中がシクシクと痛む。少しでもそばに居られないと思いは強く激しくなって、魔力をひどく消耗した。

 ルルは「言ってくれたら金貨を渡したのに」と悔やんだ。