物質を介することで、情が沸くのを防ぐのだ。もらった分の働きをしたら、すぐに離れて相手を忘れる。そうでないと、骨の髄まで利用されて死ぬことになるからだ。

 対価を得ずに人間に肩入れした場合は、生まれ持った憎悪によって魔力を消耗していく。

 ノアは、代償をもらわない状態で、長くルルに尽くした。そのせいで魔力はすり減り、空も飛べない、人を攻撃もできない、疲弊した猛獣になってしまった。

「こうなっては、いつまでお側にいられるか……」
「どうして、黙っていたの?」

 声の方を振りかえると、ルルが立っていた。ノアは驚いて立ち上がる。

「ルルーティカ様、これは」

 急いで袖を下ろそうとしたが、近づいてきたルルに掴まれる方が早かった。彼女は、透ける手を青ざめた顔で見つめている。