一角獣は、清らかな水や空気を好む獣だ。ガレアクトラ帝国や他の国に飛来しないのは、それらが汚れているからである。
 密輸され角を折られて、汚れた地上に残るしかなくなった彼らは、いずれ病んで死んでしまうだろう。

「人間てのは欲深い。法で定めても破るやつらは必ず出るんだ……。罪をあばいて世間に知らしめるしかない。どうやって崖を登るか、明日になったら考えるぞ。今晩は、洞窟で眠ろう」
「はい」

 イシュタッドの案内で、ルルとノアは洞窟に向かった。
 ルルが横を歩く黒い体を撫でると、甘えるように鼻先を擦り付けてくる。

 辿りついた洞窟は、奥に行くにつれて天井が狭くなっていた。真水はその最奥で滝のように岩肌を流れている。

「空気があたたかいのは、海風が入って来ないのと、日中に太陽光で熱をおびた岩盤の影響だ。隙間風が入る古い家よりは快適な寝床だぞ」