「久しぶりだな、ルルーティカ。積もる話はあるが、まずはこっちに来て体を乾かすといい」

 兄イシュタッドは濡れたルルとノアを焚き火にあたらせた。ノアは二角獣《バイコーン》の姿のままで、ルルを囲むように座る。

「その辺の魚、もう焼けてるから。自由に食えよ」

 波打ち際で、ルルのショールを絞る兄は、以前よりも体つきがたくましくなっている。漁師を生業にしている青年のように見えるが、彼こそ聖教国フィロソフィーの聖王だ。

 ショールを岩に干したイシュタッドは、炎を挟んでルルの向かい側に腰かけた。

「お前まで崖から落ちるとは。血は争えないな」
「大司教に攻撃されて、やむなく身を投げたのですわ。イシュお兄様は、どうしてここに?」