『……ルルーティカ様、』

 ノアの声は、ルルの頭のなかに直接ひびいた。

『申し訳ありません。正体を隠していて』
「いいのよ。ぷはっ! 二角獣だって見破られたら、研究対象になってしまうものね、ぷはっ! 人として生活するのは大変だったでしょう――ぷはっっ!」

 波が顔にかかるたびに、ルルは息継ぎをした。
 足踏みするように水をかいていたが、長年の巣ごもり生活で弱った筋力では、長くは浮かんでいられない。だんだんと体が沈んでいく。

「話したいことはいっぱいあるのに、ごめんなさい。溺れそうだわ!」
『岸へ参りましょう』