ボッチャン!と高い水しぶきを上げて、二人は海へと飛び込んだ。強い衝撃にルルは気を失いかけたものの、衿元をつかまれる感触に呼び戻された。

 真夜中の暗い海のなか。塩分が染みる目では何も見通せない。水圧のせいで手足は思うように動かせないし、叫んだせいで息も保てない。

 もうろうとしたルルは、何者かに引っ張られるまま、上へ上へと向かっていく。

 やがて海面に辿りついた。水のベールを突き破るように顔を出して、ぷはっと口を開けて大きく息を吸う。

 死ななくて良かった……!
 
 安堵して目を凝らせば、海面に二角獣が立っていた。濡れそぼった翼は、月光を反射して青鈍色につやめいている。

「助けてくれたのね。ノア、ありがとう。あなたも怪我はない?」