戦慄するルルの肩を、ノアが引き寄せる。
 彼が片手で剣を向ける先では、大司教が卑しく口元を歪めていく。

「あの聖王は、密輸の証拠をつかむために忍び込んで見つかり、王女殿下と同じように屋根に上がり、同じように追い詰められました。聖王は自ら飛びましたが、王女殿下は命乞いでもなさりますかな?」
「――いいえ。命乞いなんかしないわ」

 ルルは、毅然と言い放った。

「檻に囚われた一角獣を解放してもらいます。そして、お兄様を殺した悪事についても、絶対に懺悔してもらいます!」

 ルルの怒りに呼応して、全身から魔力がほとばしった。
 今まで感じたことのない熱さは、全身が燃え上がるようだった。

「無駄なあがきを」