「大司教殿。あなたも密輸に加担しているのね」
「当然のこと。マキャベル枢機卿に逆らえば、この地では生きていけませんから。これを見た者も生かしてはおけません」

 大司教の指で魔晶石が光った。
 光は矢のように形を変えて、ルルたちを襲う。
 
「ルルーティカ様、私の後ろへ!」

 ノアが剣を抜いて矢を斬り飛ばした。次々と送られる攻撃は、じりじりと二人を後ずさらせる。
 やがて、屋根がとぎれる建物の端まで追い詰められた。

 研究所の建物は崖っぷちに建っているので、屋根の先はもう海だ。

「王族をこんな形で失うのは残念ですが、安心なされよ。ここから落ちれば死体は見つかりません。聖王がそうなったように、行方不明のまま歴史に刻まれるでしょう」
「お兄様も、ここから落ちたの……?」