後ろ足で踏み切って飛びかかられたルルは、しりもちを付いて倒れた。その拍子に、転がっていた石壁の塊に額をぶつけてしまう。

「つっ!」

 頭の怪我だったので、大量の血が吹き出した。
 深い傷からもたらされる痛みに、意識がもうろうとする。

 ガサリと音がして目を凝らせば、二角獣がルルの体に覆い被さるように立っていた。ルルの頬に鼻先を押し当ててから、血ごと傷を舐める。

『ルルーティカ……』

 少年のような声で名前を呼ばれた。パアッと二角獣の全身が光り出して、姿がぐにゃりと歪んでいき――。
 ルルはそこで意識を失った。後のことは分からない。