レバーを下ろすと、魔力を吸い上げていた装置が止まった。
 ほっとしたのも束の間、檻の方から轟音がひびいた。

 二角獣《バイコーン》が金属の柵に体当たりして内側から破ったのだ。ひしゃげたパイプを押しのけて表に出てくる姿を見て、ルルは怖くなってしまった。

「あ……」

 檻のなかにいるときは小さな子どもに見えたのに、抑えつけるもののなくなった黒い体は、ルルの倍ほどに大きい。

 二角獣は、動けないルルに近づいてきて、鼻先を頬にすり寄せた。
 甘える仕草は一角獣《ユニコーン》と同じだ。少しだけ緊張をほぐされて、二角獣の頬をポンポンと叩く。

「辛かったでしょう。もう大丈夫よ」
「――魔法が割られた。侵入者がいないか至急確認を――。ルルーティカ王女殿下、なぜここに?」