こっそりベッドから下りたルルは、肩にストールをかけて部屋を抜け出した。
 声に導かれるように歩いて行くと、例の研究所跡が見える広場へ辿りついた。

 草原には、一角獣《ユニコーン》がポツポツと飛来している。昼間はいなかったのにと目を凝らして、こんな真夜中に、草原を見渡せるはずがないと気づいた。

「これも、魔晶石を通じてみたお兄様の映像と同じく、過去の光景なんだわ」

 声は、映像は、ルルに何を伝えようとしているのだろう。

 ルルは、柵を乗り越えて草原に足を踏み入れた。
 伸び放題になっている草を踏み締めながら、海に向かって進んでいく。
 一角獣の幻影は、ルルがそばを通りすぎると、役目を終えたとばかりに消えていった。

 やがてルルは、崩れて風化した元研究所の前に到着した。