ルルを抱きしめる力が、きゅうっと強くなった。まるで人に盗られそうになった宝物を抱える子どもだ。
 いたいけな独占欲を感じて、ルルの胸もまた、きゅうと切なく締めつけられる。
 
(ノアは、どうして、わたしを、とられたくないの?)

 聞きたいけれど聞けない。
 王位継承者としてジュリオを制すため、また兄イシュタッドを探す使命を担うために、そば仕えの騎士《ノア》はぜったいに必要だ。

 王女と騎士の関係性を越えてしまえば、ルルは何もかもを放り出してノアに甘えてしまう。

 彼の腕のなかは温かくて、毛布に包まれているよりもずっと居心地がいい。
 抱きしめられていると安心して、日向に置いた砂糖菓子みたいに、とろとろに溶けてしまいそうになる。

(ノア、大好きよ)

 でも言えない。もどかしくて、ルルはノアの胸に自分の顔を押しつけた。