司教の前進を止めたのはノアだった。
 険しい顔で、相手の胸に鞘を押し当てている。

「この方に不躾に触れようものなら、その汚い手を切り落とす。ルルーティカ様、馬鹿騒ぎに付き合う必要はありません。行きましょう」

 ノアに手を引かれて立ち上がったルルは、食堂を後にした。
 司教たちが追ってこないか心配だったが、彼らはノアの全身から発せられる殺気に怯え、大司教までも気圧されて動けずにいた。

 足早に宿へ辿りつく。「おかえり」という女将に生返事をして、階段を駆け上がって部屋に入ったノアは、閉めたドアに押しつけるようにして、ルルを抱きしめた。

「ノア?」
「……腹が立ちました。貴方をうばおうとした、あの男たちに」