太った司教がワインボトルを手に近づいてきた。すでに相当飲んでいるらしく、息が酒臭い。彼はルルのグラスにとくとくと酒を注ぐが、手元がくるってテーブルクロスを汚してしまった。

「あー。こぼしちまった。気にしないで飲んでくださいよ。んで気持ちよくなったら、こっちにも酒を注いでください。王女に酌してもらえたら、一生の自慢になりますから。なあ?」

 他の司教も酔いが回っているようで、こぼれた酒を見て大笑いしている。
 大司教にもニヤニヤと見つめられて、ルルは不快感を覚えた。

「王女って大変でしょう。ここで、ゆっくり羽根を伸ばしていったらいいんですよ。マキャベル様の威光があれば、馬鹿騒ぎしようが何しようが許されるんだから」
「泊まるところがないなら、おれの部屋はどうです。いい夢みせますよ」
「こいつのところは臭いから、おれんとこで飲み明かしたらいい」
「喧嘩しなくても一人ずつ遊べばいいだろう。夜は長いんだからな」