「聖堂をご案内いたしましょう。ここは、王たる一角獣《ユニコーン》が飛来して、初代の聖王を見初めた国興《くにお》きの地。そのときの一角獣の姿を写しとった彫像を、崇敬の対象にしております」

 聖堂の舞台上には、ルルが知っている一角獣とは違う獣の像が置かれていた。
 頭部には二本の丸まった角があり、体は真っ黒で、まがまがしい。

「これは二角獣《バイコーン》では?」
「これこそ一角獣の王なのです。人懐っこく純粋な一角獣に対して、二角獣は人を嫌う荒々しい不純な獣。それに選ばれた者こそ、真の聖王だと言われております――」

 大司教はあっさり案内を終えると、ルルを食事に誘った。
 探りを入れるチャンスだ。申し出を受けると、食堂に場所をうつして歓待された。

 聖王城でも使われている銀の食器に、海の幸を使った贅沢な料理がのせられている。それがケーキも合わせて十五皿も運ばれてきたので、ルルはびっくりしてしまった。