ルルが危惧していたのは、道行きで襲われることだった。誰にも知られずに始末されて、聖王候補がジュリオしか残っていないとなれば、それこそ彼らの思うつぼだ。

 アンジェラとキルケゴールのおかげで追っ手を回避して、ユーディト地区に辿り着けたらば、あとはもう自分の立場をもって立ち向かうしかない。

「ここまできたら、身分を明かして正々堂々と王女として振る舞った方が危険は少ないの。ただの旅行者として行動して、秘密裏に殺されでもしたら、行方不明になっているお兄様の二の舞よ。二人きりだからこそ、先手を打たなきゃ」

 覚悟を決めたルルの背はピンと伸びている。
 巣ごもり成分を感じさせない立派な王女の姿に、ノアは瞳を揺らして一礼した。

「ルルーティカ王女殿下。聖騎士ノワールが貴方をお守りします」
「ええ、よろしくね。ノア」