「聖教国フィロソフィーの王女殿下への礼節を欠くとは、教会らしくありません。教会ぐるみで王族への反発心がありそうですね。マキャベルがジュリオを推している状況とも繋がります」
「そうなのよ。だから、思いきって前に出てみようかと思って」
「前に、とは?」
「私が『ルルーティカ王女です』って出て行ったら、相手の反応が露骨に分かるわ。王族への反発心があるんだったら、その理由はなんなのか確かめておきたいの」

 アンジェラが一角獣保護法によってイシュタッドや王族を憎まなければならなったように、ユーディト地区の教会の行いにも理由があるはずだ。
 どこに不満を持っているか、なにを改善してほしいか、現地でしか聞けない意見に耳をかたむける義務がルルにはある。 

「教会関係者に身分を明かせば、また危険な目にあうかもしれません。この場で暗殺される危険性もあるかと」

「心配はいらないわ。ユーディト地区で王女が襲撃されるのは、城下のカントで誰の手先か分からない暴漢に襲われるのとはわけが違うの。教会関係者は――マキャベル枢機卿も含めて、地元に悪評がつくのを嫌がるはずよ」