「ルルーティカ様。あれが元『ユーディト研究所』です」

 建物は、大きなスコップでえぐり取られたように壊れていて、ガラスがはまっていただろう採光窓の類いはすべて抜け落ちていた。
 爆発の威力がいかに大きかったか忍ばせる。

 ジクリと額が痛んで、ルルは傷跡に手を当てた。
 ここで負った怪我が悲鳴を上げているようだ。忘れたことはない。あの日のことは、昨日のことのように思い出せた。

 事故の恐ろしさをこらえながら、ルルは目を凝らす。
 辺りの光景は、魔晶石を通して見た映像とそっくりだ。

 兄イシュタッドはここに来ていた。
 しかも、ルルが立っている場所よりも、さらに研究所跡の廃墟近く。崖から海を見下ろせるような位置に。

(どこにいるの、お兄様)