朝になって再び汽車に乗りこんだルルとノアは、半日ほどでユーディト地区へ辿り着いた。
 古い駅舎には、主席枢機卿マキャベルの彫像が置かれていて、彼のおかげでこの地区の経済はうるおっている、と褒めたたえる内容の石碑も添えられている。

 道を歩けば、屋台にはマキャベルの名前が刺繍されたハンカチが売っていたり、顔だちが焼き付けられたクッキーがあったりと、地区全体で彼を崇めているようだ。

「まるで王様みたいな扱いね」
「国の政治を動かす立場なので、ある意味、聖王よりも王のようなものでしょう。形骸化していた王座におさまらなかったイシュタッドの存在は、マキャベルにとって邪魔だったと思います」

 駅にあった地図を頼りに、海に向かって通りを歩いて行く。屋台はじょじょに少なくなり、建物がとぎれて視界が開けた。

 立ち入り禁止の看板と長い柵。
 その向こうの広大な草原のなかに、崩れかけた建物が見える。