「ありがとう、ノア」

 いつの間にか、ノアの腕のなかが、お気に入りの毛布よりも好きな場所になってしまったみたいだ。冷め切っていた体がぽかぽかと温まっていく。

 ノアに抱かれたまま横たわって目を閉じると、ルルはすぐに睡魔に襲われた。
 久しぶりに訪れた、幸せな眠りだった。

「すぅー、すぅー……」

 健やかな息の音を聞きながら、ノアはルルの寝顔を見つめていた。
 いつもは背中から抱き締めているので、真正面の彼女は新鮮だ。

 伏せられた銀色のまつげや、小さな鼻、ツンとした赤いくちびるに、視線が吸い寄せられる。喉の奥に感じるのは、飢えた獣のような渇きだ。

(だめだ、こらえろ)