ルルとノアを乗せた汽車は、途中の駅で止まった。
 ユーディト地区までの移動は二日がかりになるため、乗客は近くの宿で一泊して、翌朝になったらまた同じ車両に乗りこむのだ。

 ガレアクトラ軍人に尾行されて突発的に汽車に乗った二人には、当然ながら宿の用意はない。
 あちらこちらの宿におもむき、空いている部屋がないか聞いてまわる。どこも満室で、宿泊を断られるまでを、いくども繰り返した。

 そのうちに雨が降り始めて、ルルとノアはびしょ濡れになってしまった。
 寒さに震えながら歩いていくと、駅から遠い安宿で一室だけ空きが見つかった。

「部屋が見つかってよかった。野宿になるかと思ったわ」
 
 濡れた髪をタオルでふきながら、ルルは質素な部屋を見回した。

 シングルサイズのベッドと使い古しの椅子、ライティングテーブルが置かれている。床にある火鉢では、熱をもった炭が爆ぜていた。