アンジェラは、前方の小窓を開けてノアに呼びかけた。

「カントを出ると、ユーディト地区に向かう街道のそばにはほとんど建物がない。周りの目がなくなったら、あいつら一気に襲撃してくるぞ。数で来られたらたまったもんじゃねえ。北北西に進路をとれ!」

 ノアは、手綱を引いて走っていた道を曲がった。
 アンジェラが向かえと言った場所には青果市場が見える。道幅の広い通路に、木で作られた屋台がいくつも軒を並べていて、市民が日々の食料品を買っている。

「北北西に来たけど、ここからどうするの? アンジェラ」
「つっこむんだよ」

 ニーっと笑われて、ルルはきょとんとした。

「つっこむ?」
「ああ。舌噛まないように口閉じとけよ、ルルーティカ! ノア、キルケゴール、たのむぜ!!」