「巣ごもり上手は狭い場所ほど活躍するのよ。どんな場所でも完璧に巣ごもり体勢をとるテクニックには、長年の信頼と実績があるんだから!」

 座席のような狭い場所で、いかに無駄をはぶいて丸くなるか――つまりは、どうやって身を守るか――は、ルルの得意ジャンルだと言ってもいい。
 背中を背もたれに付けられるので、広いベッドの上よりも安心感がある。

(これなら二日とはいわず、十日ぐらいはやっていけそう)

 そう思ったとき、客車の戸が鞭でパンと叩かれた。
 叩いたのはノアだ。危険が迫ったら、こうして合図を送る手はずになっていた。

 アンジェラが後ろを伺うと、荷馬車を挟んだ二台後ろに乗合馬車が走っている。
 客車の窓からチラチラと見え隠れしているのは、真っ赤な軍服だ。

「ガレアクトラ軍人たちに後を付けられてる。移動中にこっちを襲うつもりだな」