旅支度をととのえたルルは、黒い騎士服で固めたノア、アンジェラと共にキルケシュタイン邸を出発した。

 移動手段は、王城から借りた箱形の客車だ。中には、レース仕立ての白いドレスを身につけて、ツバの広い女優帽を被ったルルと、アンジェラが乗っている。

 車の後部にはトランクなどの荷物が縄でくくり付けられている。

 前方の馭者台で一角獣《ユニコーン》を駆るのはノアだ。
 客車を引くキルケゴールとは意思疎通が図れているので、手にした鞭で打つような真似はしない。

「ユーディト地区までは二日ぐらいかかる。狭いけど我慢しろよ、ルルーティカ」
「心配しないで、アンジェラ。わたしを誰だと思っているの?」

 帽子を外したルルは、背中に当てていたお気に入りの毛布を引っ張り出し、読みかけの本を右手の近くに、左手側には遠出用のために詰められた水筒を配置して、くるりと丸まった。