(嫌われたわけではないだろうけど……。ちょっと寂しい)

 ノアとは毎日くっつきすぎだったから、常識的な距離が戻ったにすぎない。
 けれど、彼がぎこちない言い訳を並べるたびに、ルルの心には寒風が吹いた。

 真白いローテーブルに、革張りのトランクをのせたルルは、衣服やアクセサリー、金貨を入れた袋などを周りに集めた。

 ユーディト地区への訪問は三日間の予定だ。
 同じドレスを着回すのはそれぞれの訪問先によろしくないので、『ご立派なルルーティカ王女』に見える装いを考えて荷造りする。気が重い作業だ。

 薄い緑色のドレスを体に当てて、姿見に映したルルの耳に、ここにはいないノアの声が聞こえる。
 ――ルルーティカ様はそのままで十分に王女らしいです。

「そうは言っても、わたしが着飾るとノアは喜んでくれるはずだわ」