「それにしても、わたしは魔力を失っているはずなのに、どうして見えたのかしらね。教会裏にあった飛来地での光もそう。発露する条件があるとしたら知っておきたいわ。アンジェラは何が原因だと思う?」
「ルルーティカの体のことは、ルルーティカが一番よく知ってるはずだ。お前が分からなければ、あたしだって分からない。この世は分からないことだらけで嫌になるぜ。今だって、なんで枢機卿団がジュリオを推してるのかさっぱりだ。あんな鼻持ちならないキザ野郎のどこがいいってんだよ。ルルーティカの方が絶対にいいのに」

 納得できない顔でワゴンを押していくアンジェラを見送って、ルルは一人考えた。

(ユーディト地区は、主席枢機卿マキャベルの故郷だわ。お兄様を探すついでに、彼がジュリオ王子を推挙するのはなぜなのか、そちらも探ってみましょう)

 柱時計を見ながら待ったが、ノアが現われなかったので、ルルは自分の足で自室に向かった。

 晩餐会を境にして、ノアはルルのそばに寄りつかなくなってしまった。
 毎日、何かと理由をつけて用事をこなすようになったのだ。今は、訓練のためと言って、キルケゴールに騎乗している。