ジュリオがそうであるように、ガレアクトラ帝国の軍人たちもまた、聖教国フィロソフィーを愚か者の集まりのように考えている節がある。

 軍人たちの思想は、特に顕著だ。
 彼らは『枢機卿団はジュリオ王子を聖王にすると決めた』と、発表もされていないことを宣いながら、我が物顔でカントを闊歩《かっぽ》している。
 誰に迷惑をかけても気にしない。まさに王様気取りである。
 
「表に顔を出さないと、どんどんジュリオ側の策略にはまっていく気がするの。積極的に教会への慈善訪問をつづけるべきではないかしら?」

「ダメだ。ノワールも言ってただろ。ガレアクトラ軍人が、どこでルルーティカにちょっかいを出してくるか分からないって。ユーディト地区に行くまえに怪我でも負わされたら、イシュタッドを探す計画がつぶれちまうぞ。せっかく、どこにいるかのヒントが得られたのに」

 魔晶石からルルが受け取った兄の情報は断片的だった。
 それでも、崩れかけた建物から、ユーディト地区ということだけは分かった。今まで、まったく手がかりがなかったと思えば大進歩である。