座っていたソファは、豪奢な家具が置かれた控え室にあり、ノアやアンジェラが心配そうに顔を覗き込んでいる。

「どうした、ルルーティカ?」
「いま、魔晶石を通して見えたの。お兄様が、どこかの岸壁に立っているところが!」

 ルルは魔力を失っているかに思われていたが、ときたま発現すると最近わかった。
 見えた映像もその賜物《たまもの》だろう。この魔晶石がとられる前、持ち主だった一角獣は、兄といっしょにいたのかもしれない。
 
「どこかの地方だと思うわ。崩れかけた大きな施設があった……」
「崖の上にある崩れかけた構造物か。思いつくのは、ユーディト地区の研究所跡地だな。事故によって良くない魔力が滞留しているとかで、壊されずに残っている。だが、ここ一年ほどイシュタッド陛下はユーディト地区へは行っていないはずだ」
「ということは、一人で出掛けられたのかもしれないわ」

 行方不明の兄が、最近行っただろう場所。調べてみる価値はありそうだ。