ルルが呼ぶと、騎士――ノアは、ほんの少し瞳を細めた。感情が表に出ないタイプらしく、表情はわずかな変化だったが、ルルには喜んでいるように見えた。

「私がルルーティカ様を修道院から連れ出したのは、貴方に危険が迫っているからです。イシュタッド陛下がお隠れになった今、さまざまな人間が自分に恩恵のある者を王座に担ぎ上げようとしています。いつルルーティカ様の命を奪いに行ってもおかしくなかった。一刻もはやく、秘密裏に、別の場所へかくまう必要がありました」

 ノアの奇襲のごとき来訪は、そのためだったらしい。だが、秘密裏に別の場所へと言うなら、もっと隠密に行動するべきだったのではないだろうか。

「私を守ろうとしてくれたことには感謝します。だけど、もっと人目を避けてカントに入った方が良かったのではない? 少なくとも、ノアが敬礼した聖騎士には確実に見られたわ」

「その心配はありません。ルル様は毛布に包まれておいででしたから、下からは私が『巨大な毛玉』を運んでいるようにしか見えなかったはずです」
「毛玉!?」