「他の国に一角獣は飛来しないから、聖教国フィロソフィーで密猟されたものかしら」
「その可能性が高いな。ジュリオ王子についてきて国内で手に入れたのか、それともガレアクトラ帝国への密輸ルートがあるのかは分からないが……」

 ヴォーヴナルグは、そこまで言って、急に笑った。
 ルルが不可解そうに見ると、「いや」と弁明する。

「イシュタッド陛下が知ったら、政務も会議も何もかもをほっぽり出して、真相を確かめに行くだろうと思ってな。国内のどこにでも一人で突撃していくような、元気が良すぎる聖王だった。好奇心は猫をも殺す、その調子で行動していたら、いつか大変なことになるって、何度も注意したんだが……」
「ヴォーヴナルグ聖騎士団長。兄は生きていますわ」

 ルルは自分に言い聞かせるように、強い口調で言い放った。

「殺しても死なないような人です。それは、団長自身がいちばんご存じでしょう? あきらめずに探しましょう。どこかで助けを待っているかもしれませんから――」