「だと思うぜ。真っ赤な軍服でくだ巻いて、『あんたらはルルーティカ王女が聖王になると思ってんだろうが、枢機卿団はうちのジュリオ王子殿下に内定を出すと決めた!』って大声で吹聴してたんだ。通報を受けたうちが、『いい加減にしろ』って出て行ったら、魔法でカミナリを出して楯突いてきた。これを使って」

 ヴォーヴナルグが開いた手の平には、真新しい魔晶石が一つのっていた。加工品ではなくて、根元から折られた角を持ち歩きやすいサイズに切ったもののようだ。

「本来の魔晶石は、持っている魔力を増幅させる、補助的な役割をはたすものだ。魔力のない一般人が魔法を使えるようにするには、一角獣《ユニコーン》から半年以内にとれた魔晶石が必要だと言われている」
「半年?」

 一角獣保護法が施行されて、もう三年も経つ。
 つまり、ガレアクトラ軍人が持っていた魔晶石は、違法に採取されたものだ。